現在新型コロナウイルスの影響で消費や生産が停止し、世界的に経済が低迷してしまっています。その被害はリーマンショック以上とも言われており、勤務先の倒産に怯えている人も増加していると思います。
今回は会社都合で退職した場合の失業保険(雇用保険の求職者給付)について説明します。
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雇用保険の求職者給付
よく失業保険と耳にしますが失業保険は正式名称ではなく、正式名称は雇用保険の「求職者給付」と言います。雇用保険制度に基づいた手当のことで、雇用保険に加入している人は会社を退職したときにこの手当を受け取ることができるようになります。受給できる金額や期間は雇用保険の加入期間や年収により変わります。
- 勤務開始日から31日以上働く見込みがある者
- 1週間あたり20時間以上働いていること
- 一部例外を除き、学生ではないこと
この3つに該当していれば企業側は必ず従業員を雇用保険に加入させなければなりませんし、これに満たない場合は雇用保険に加入することができません。
『会社都合』となる退職理由
一般的に退職する理由の多くが自己都合に当てあまります。結婚・引越し・出産・療養・介護・転職など、例え会社に不満があったとしても自己都合の退職という扱いになります。
また、定年退職や契約満了で退職する場合は会社都合に当てはまらず、その他に分類されます。
会社都合での退職となるのは下記のような理由です。
- 会社が倒産した
- 経営不振などが理由の大量リストラ
- 自分に責任がない場合での解雇
- パワハラなどを受けた場合
- 労働条件が著しく違っていた場合
- 賃金の未払い
- 有期契約の打ち切りによる退職
- 退職勧奨を受けた場合(早期退職優遇制度等は除く)
※なお、自身の問題によって解雇された場合は自己都合に分類されます。
求職者給付の受給条件
求職者給付を受給するには下記の2点の条件を満たしている必要があります。
①雇用保険の加入期間
求職者給付を受給するためには一定期間以上、雇用保険の被保険者でいる必要があります。
会社都合の場合
退職日前の1年間で、被保険者期間が通算6ヶ月以上あること
自己都合の場合
退職日前の2年間で、被保険者期間が通算12ヶ月以上あること
②すぐに働く意思と能力があること
- すぐに働く意思があること
- いつでも就職できる環境にあること
- 求職活動を行っているが就職できない状況にあること
求職者給付を受給するにはこの3点の状態でいなければなりません。
療養中ですぐに就職できる状態ではない、出産を控えていて当面の間就職するつもりがない、という状態ではすぐに就職する意思がないと判断され受給することができません。
申請手続きについて
雇用保険の求職者給付は自己都合で退職した場合も、会社都合で退職した場合であっても、自分で申請しなければ受給はできません。
退職したら住所地を管轄するハローワークへ行き、求職の申し込みを行います。
手続きに必要なもの
申請に必要な書類は下記の通りです。
- 離職票1
- 離職票2
- 雇用保険被保険者証
- 個人番号確認書類(マイナンバーカード、通知カード、個人番号がわかる住民票のいずれか)
- 身分証明書(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)
- 写真2枚(たて3cm×よこ2.5cm)
- 印鑑
- 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード(口座番号がわかるもの)
離職票について
離職票はそれまで勤めていた会社に用意してもらいます。
離職票が必要かどうか会社側が確認してくれることも多いのですが、自分から申し出ない限り用意してくれないこともあるので、必ず離職票が必要であることを会社側へ伝えましょう。
企業側が離職票を退職者の自宅に郵送するまでに、
企業側がハローワークへ必要書類を提出→ハローワークが離職票を企業へ交付→企業側が退職者の自宅へ郵送
という手続きを要するので、一般的に離職票が手元に届くまでに2週間程度かかります。
ハローワークへの申請が遅くなるほど、受給も遅くなります。
一刻も早く受給したい人は退職日から12日たてば仮手続きが可能になりますので、離職票以外の書類で仮手続きを行いましょう。
(企業側は退職日から10日以内に離職票の申請を行わなければなりません。また会社が倒産した場合は破産管財人がその手続きを行います。)
2週間たって離職票が届かない場合は会社側に催促しましょう。連絡が取れない、トラブルがあり連絡したくない、催促しても一向に送ってくれないなど、何かしらの理由がある場合はハローワークへ相談してください。
申請の流れ
必要書類を持って管轄のハローワークで求職の申し込みを行います。
その日に受給資格の決定がなされ、雇用保険受給資格者のしおりを渡されます。その後その日から換算して7日間の待機期間があります。
雇用保険受給者初回説明会に参加
求職の申し込みを行った日に、雇用保険受給者初回説明会の日時が決定します。7日間の待機期間後にこの説明会に参加します。この説明会に参加しなければ求職者給付は受給できませんので、必ず参加する必要があります。
この説明会でその後必要な雇用保険受給資格者証(写真付き)と失業認定申告書が渡されます。また、認定日がいつなのかもこの時に決まります。
この説明会は求職活動実績に換算されます。
求職者給付が振り込まれるまで
求職の申し込みをした日から7日間の待機期間→数日→雇用保険受給者初回説明会→初回認定日までの約3週間→初回振込
会社都合で退職した場合は上記のような流れになります。求職申し込みを行った日からおよそ4週間後に初回振込が行われます。待機期間の7日間分は支給されないので、初回振込は約3週間分です。
求職の申し込みをした日から7日間の待機期間→数日→雇用保険受給者初回説明会→給付制限3ヶ月→初回認定日までの1週間〜3週間→初回振込
自己都合で退職した場合は3ヶ月の給付制限があります。そのため会社都合で退職した場合と違い、初回の振込まで約4ヶ月ほどかかります。
4週間に1度の認定日に行く
原則として4週間に1度決められた日時にハローワークへ行き、失業の認定を受けます。認定日〜認定日の間に2回以上の求職活動の実績が必要です。(初回のみ1回以上)
求職活動の実績として認められる活動は下記の通りです。
- ハローワークなどが行う職業相談・職業紹介
- ハローワークなどが行う各種講習・セミナーの受講
- 求人への応募(事実確認をされる場合もあり)
- 就職採用試験または面接(提出書類あり)
- 民間職業紹介機関による職業相談、職業紹介等
- 公的機関などが行う個別相談ができる企業説明会等の受講・参加
- 各種国家試験や検定などの資格試験の受験
求人サイトの閲覧だけでは求職活動実績として認められませんので注意が必要です。
求職者給付の受給額
基本手当日額の算出方法は下記の通りです。
ここでの給与は手取りではなく総支給額で計算し、残業代や各種手当も含みます。なお賞与は含みません。
上の計算式で、退職前6ヶ月の給与総額÷180ででた数字が賃金日額となります。賃金日額には上限額と下限額が決められています。
※令和2年3月1日〜令和2年7月31日まで
※年齢は離職時の年齢
【上限額】
29歳以下・・・13,630円
30歳~44歳まで・・・15,140円
45歳~59歳まで・・・16,660円
60歳~64歳まで・・・15,890円
【下限額】
全年齢・・・2,500円
給付率は下記の表を参考にしてください。(左が賃金日額、右が給付率)
2,500円以上~5,010円未満・・・80%
5,010円以上~12,330円以下・・・80%〜50%
12,330円超~13,630円以下・・・50%
13,630円超(上限額)・・・上限額6,815円が基本手当日額
2,500円以上~5,010円未満・・・80%
5,010円以上~12,330円以下・・・80%〜50%
12,330円超~15,140円以下・・・50%
15,140円超(上限額)・・・上限額7,570円が基本手当日額
2,500円以上~5,010円未満・・・80%
5,010円以上~12,330円以下・・・80%〜50%
12,330円超~16,660円以下・・・50%
16,660円超(上限額)・・・上限額8,330円が基本手当日額
2,500円以上~5,010円未満・・・80%
5,010円以上~11,090円以下・・・80%〜45%
11,090円超~15,890円以下・・・45%
15,890 円超(上限額)・・・上限額7,150円が基本手当日額
なお、基本手当日額の下限額は全年齢2,000円です。
給与が高い人ほど50%に近い割合に、少ない人ほど80%に近い割合になります。
求職者給付の受給日数
自己都合で退職した場合
被保険者期間 | 所定給付日数 |
10年未満 | 90日 |
10年以上〜20年未満 | 120日 |
20年以上 | 150日 |
会社都合で退職した場合
離職時の年齢が29歳未満
被保険者期間 | 所定給付日数 |
1年未満 | 90日 |
1年以上〜5年未満 | 90日 |
5年以上〜10年未満 | 120日 |
10年以上〜20年未満 | 180日 |
離職時の年齢が30歳以上35歳未満
被保険者期間 | 所定給付日数 |
1年未満 | 90日 |
1年以上〜5年未満 | 120日 |
5年以上〜10年未満 | 180日 |
10年以上〜20年未満 | 210日 |
20年以上 | 240日 |
離職時の年齢が35歳以上45歳未満
被保険者期間 | 所定給付日数 |
1年未満 | 90日 |
1年以上〜5年未満 | 150日 |
5年以上〜10年未満 | 180日 |
10年以上〜20年未満 | 240日 |
20年以上 | 270日 |
離職時の年齢が45歳以上60歳未満
被保険者期間 | 所定給付日数 |
1年未満 | 90日 |
1年以上〜5年未満 | 180日 |
5年以上〜10年未満 | 240日 |
10年以上〜20年未満 | 270日 |
20年以上 | 330日 |
離職時の年齢が60歳以上65歳未満
被保険者期間 | 所定給付日数 |
1年未満 | 90日 |
1年以上〜5年未満 | 150日 |
5年以上〜10年未満 | 180日 |
10年以上〜20年未満 | 210日 |
20年以上 | 240日 |
会社都合退職のメリット
会社都合で退職をしなければならない時も、メリットが存在します!
求職者給付をすぐに受け取ることができる
自己都合で退職した場合、手続き後およそ3ヶ月後からしか給付を受け取ることができませんが、会社都合で退職となった場合は手続きをしたらおよそ1週間後には給付を受け取ることができます。
受給可能期間が長い
上記の表の通り、自己都合退職に比べ長い期間求職者給付を受け取ることができます。
解雇予告手当を受け取ることができる
会社都合の退職で【解雇】に分類される場合、解雇予告手当を最大30日間分受け取ることができます。
会社側が従業員を解雇する場合、原則として離職日の30日前に伝えることが法律により決まっています。
- 即日解雇の場合・・・給与30日間分を支給
- 解雇日の10日前に予告・・・給与20日間分を支給
- 解雇日の30日前に予告・・・支給なし
なお、懲戒免職の場合や、14日未満の使用期間中の方、雇用期間が1ヶ月未満の方などは解雇予告手当の支給対象外となります。
国民健康保険の軽減
離職後の健康保険は、国民健康保険に加入するか、それまで加入していた保険を任意継続するか選ばなければなりません。どちらを選択するかは個人の自由ですが、金額が違ってくるので計算した上で安くなる方を選択されることをおすすめします。
任意継続の場合はそれまで会社が半額負担してくれていたので、今まで支払っていた額の2倍を支払うことになります。
会社都合で退職した場合、国民健康保険は前年の給与所得を30/100として算定した金額で保険料を算出します。扶養家族がいたり、住んでいる自治体によりさらに減免される制度があったりするので、該当する役所に尋ねてみましょう。
自己都合退職だと毎月2〜3万円支払わなくてはならない保険料も、軽減対象になると1万円以下になるようです。
まとめ
大不況の最中で自分の勤めている会社が今後どうなるのか、不安を抱えている人も多くいると思います。
万が一会社が倒産したり、大量リストラにあったとしても、国には最低限の収入を保証してくれる仕組みがあります。まずはハローワークや役所に相談して、使える仕組みは全て使いましょう。